健康を願う野菜作り

「父の畑を引き継いで」

50年前、僕の父が畑を始めた理由は、とてもシンプルで深いものでした。母が病気がちで、体調が優れない日々が続いていたからです。

医者の言葉では、薬に頼るばかりではなく、健康な食べ物が大切だと何度も言われていたことを覚えています。

父は、ただ普通の野菜を作るのではなく、母が安心して食べられる野菜を作りたかったのです。

 病気を抱えた母のために、もちろん無農薬、そして化学肥料を使わずに有機肥料のみで栽培していたと、ぼくにはそんな覚えがあります。

 そして、父が選んだ土地、家の前の畑は運命的に素晴らしい土壌がありました。それは、真っ黒で見た目ホクホクしてるような土。まるで自然の恵みをすべて抱き込んだような「黒ボク土」。微生物が活発に働き、作物が元気に育つその土で、父は一つひとつ心を込めて野菜を育てていったのです。

 時間が経つにつれて、父の作る野菜は見違えるほどおいしく栄養豊富で、それにつられるように母もだんだん元気を取り戻していきました。

 健康を取り戻すためには、食べ物がどれほど大切かを痛感し、父はその畑にかける情熱を増していきました。僕はそんな父の背中を見て育ちました。

 そして年月が過ぎ、父も母もこの世を去っていきました。僕はその時、父が残してくれた畑と大切な教えを引き継ぐ決心をしました。
 畑はそのまま引き継ぎ、僕自身もまた、自然の力を信じて野菜作りを続けていこうと決めたのです。

 父が育てたあの「黒ボク土」の畑は、いまでも健やかな生命が満ちています。微生物が土の中で活動し、昆虫たちが蜜を集めにやってくる。特に、ミツバチのブンブンという羽の音がいつも畑を包み込んでいるのを聞くたびに、父の畑が受け継がれていることを実感します。

 父が手間ひまかけて作ったあの畑が、今も生きていてくれることに、感謝と誇りを感じています。

 僕は今も、その畑で固定種の野菜を育てています。スーパーで見かけるような野菜とは違い、手間を惜しまず、時間をかけて育てた本物の野菜。無農薬、そして無化学肥料で、土の力を最大限に引き出し、牛糞や鶏糞は使わない。肥料は米糠と納豆から作る、手作りの納豆菌ぼかしのみという自分の決め事。
 自然のバランスを崩さないように気をつけながら育てています。

 それでも、野菜作りには大変なことも多いです。天候や害虫、時には病気にも悩まされます。それでも、どんなに困難な時でも、父が教えてくれた「自然を大切にする」という思いを胸に、僕はその土地に寄り添って野菜を育てています。

 そして今、僕の作った野菜を食べてくれる人々が増えてきました。

 「こんなにおいしい野菜、スーパーじゃ絶対に買えない」と言ってくれる人がいると、やはり嬉しく思います。

 僕が育てた野菜が、誰かの健康を支え、元気を与えることができていると感じると、それが何よりの励みになります。父が残してくれた畑を引き継いだこと、そしてその畑で作られる野菜が、今も人々の健康を育むことに、心から感謝しています。

 僕はこれからも、父が始めたこの畑を続けていきます。ひとつひとつの野菜に込められた愛情と自然の力が、これからも多くの人々に届きますように。

 そして、何よりも忘れないでいきたいのは、「固定種の野菜が持つ力」—それは、ただ栄養を与えるだけではなく、自然とのつながりを感じさせてくれるものです。

だからこそ、スーパーでは手に入らないこの固定種の野菜を、健康を願うすべての人々に届けたいと思っています。